夢から覚めたら泣いていた
始まりは舞台の前からだった。
僕は演劇を見に来ていた。
隣には、なぜか有名な俳優が座っていて、この間出演していた劇見ましたよって話しかけたら、「あれは全員見るべきものだから、当然だね」と言われた。
ずいぶん自信家なんだな、と思いながら、その人の友達の俳優を褒めたら、とても喜んでくれた。
その内、自分の知り合いがたくさんきて、前の席に入れ替わり座ったり立ったりしてて、肝心の演劇は全然見えなかった。
最後になぜか次回作の予告が流れて、「今度は女性だけの演劇です!」と謳っていた。
月面?壊れた宇宙船?にて。
友人が「写真撮ってよ」と言ってくる。
僕は、もちろんだよ、と言いながら、カメラを出した。
でも撮っても上手く撮れなかった、画が四コマ漫画みたいだった。
友人に謝ろうとしたら、レンズが(そのレンズは、もう会えない友達が「いらないから」と言って、くれたレンズだったのに)壊れてしまった。
途方に暮れた僕は、カメラ本体だけ持って、他のレンズを探した。
気が付いたら僕は高校の美術室にいた。
金髪の友人が一所懸命に、一生懸命に絵を描いてた。
エプロンやら髪やら顔やらに、緑の絵の具をたくさんつけてた。
僕はもう行かなきゃいけなかった。
部屋を出るとき、友人と目があって、なんか気恥ずかしくて、目を背けてしまった。
目線の先にはロッカーがあって、そこに幾つかタバコを詰めて、その友人にラインを送ってから帰った。
そのまま、昔の祖父母の家に行った。
取り壊されたはずの家だ。
玄関を開けたら、おばあちゃんが抱きついてきて、ニコニコしながら「大きくなったね」「あなたの料理はきっと美味しいわね」と言ってきた。
祖母は、もう僕のことを分からないのに。
家には今年亡くなった祖父もいた。
あと、なぜか叔父夫婦もいた。
叔父さんに「もう帰るよって伝えといて」と言われて、祖父の部屋に行った。
祖父母に伝言をしたら、僕ももう帰らなきゃいけないことを思い出した。
俺は帰りたくなかった。
このままがいいって叫んだ。
みんな微笑みながら、俺を送り出した。
映画館のスクリーンに「今の自分と違った人生」が映し出されている。
どうやらもうエンディングみたいだ。
曲が流れていた。
自分のバンドの曲だった。
スクリーンの中の僕は、何かのクラブチームに入った後、サラリーマンになって、汗水垂らしていた。
映画館を出たら、駅のホームに着いた。
改札を出ようとしたら、目の前の高校生が、タッチしたスマホをそのまま置いていきそうになっていた。
僕はそれを渡そうか悩んで、ねぇ、と声をかけた。
その高校生は、ハッとした顔で、スマホを取って行った。
自分も改札から出た。
金髪の友人からラインが届いていた。
「タバコありがとうね、今日は最高の日になったね」
そこで夢は終わり、僕は起きた。
なぜだか、涙が止まらなかった。